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ミュージアムマップ
04田尻エリア
渡り鳥と人が共生する米づくり
奈良時代には城柵があったと推定され、江戸時代には沼地の新田開発により、隧道や潜穴と呼ばれる水路トンネルを掘って一大穀倉地帯に変貌させた、先人たちの知恵とロマンが詰まった地。ラムサール条約湿地「蕪栗沼・周辺水田」は世界有数のマガンの飛来地です。
Pick UP!
10万羽を超えるマガンの日本有数の飛来地
蕪栗沼と「ふゆみずたんぼ」
冬にシベリアから飛来するマガンの国内最大級の越冬地として広く知られる蕪栗沼。夕方のねぐら入りや、朝の飛び立ちは大崎耕土の雄大さを象徴する光景です。蕪栗沼は、マガンをはじめ、約200種類の鳥が確認されています。2005年には「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」(ラムサール条約)に登録されました。日本でも珍しいヒシクイやシジュウカラガン、カリガネなども蕪栗沼を利用しています。沼ではマコモ群落からヨシ群落、ヤナギ群落へと植生が移行する低地性湿地の典型的な様子をみることができます。タコノアシ、ミズアオイ、アサザなど希少な植物も生育しています。
蕪栗沼バードウォッチング
時期:10月下旬頃から2月上旬頃
ねぐら入り:日の入り20分後頃が見ごろ
とび立ち:日の出20分前頃が見ごろ
蕪栗沼周辺では、「ふゆみずたんぼ」の取組みが行われています。稲刈りが終了した冬に田んぼに水を張る「ふゆみずたんぼ」は、江戸時代から行われてきた農法です。冬の間も田んぼに水を張ることで、冬の渡り鳥のマガンやハクチョウなどが飛来し、小さな生きものまで多様な生物が生息する田んぼとして、生物多様性の向上に貢献しています。これにより蕪栗沼などに集中していたマガンのねぐらを分散させています。そのため、ひと冬の間、この地域の田んぼでは、ねぐらから飛び立ったマガンが、餌を食べて過ごす姿が見られます。また、夏になると田んぼで育ったカエルやトンボ、クモなどは、害虫を食べる役割を果たしてくれます。ここで育てられたお米は、農薬や化学肥料を一切使用しない安全・安心な「ふゆみずたんぼ米」としてブランド化され、好評を得ています。
湿地帯を水田へと変えた先人の知恵
丘陵地帯に囲まれた低平地に沼地が点在していた田尻地域ではかつて、水田としての利用が難しい地域でした。そんな環境の中、江戸時代には既に沼地の干拓が進められていました。丘陵地にさえぎられて排水が出来なかった湖沼や湿地帯に、下流へ向けて潜穴(トンネル水路)を通して水を流しながら、一方で上流からの用水を確保していきます。下流側から順番に、貝堀沼、三高野沼、木戸沼、八幡沼、大崎沼と55年間をかけて水田化を進め、現在のような約700haの新田を開発しました。
ここで整備された用水路は、今も現役で使われており、中でも萱刈潜穴は1,121mもある長大なトンネルで、人力で採掘した当時の苦労がしのばれます。蕪栗沼は、これら新田開発の際にすべての排水が流れ込んだ場所です。沼の一部は、一度水田に姿を変えたこともありましたが、洪水・氾濫がくりかえされたため、増えた水を一時的にためるための遊水地として、再び沼に復元されました。そのことが、マガンの日本有数の飛来地としての蕪栗沼の環境を作ったことになります。
【開発された沼の位置図】
上流から大崎沼(現在の田尻諏訪峠・古川小野付近)、八幡沼(現在の田尻大嶺付近)、木戸沼(現在の田尻大嶺付近)、三高野沼(現在の田尻沼部付近)、貝堀沼(現在の田尻沼部付近)