フィールド
ミュージアムマップ
10涌谷エリア
箟峯寺を中心とした伝統的な農耕文化
町の中央に
Pick UP!
我が国で初めて金を産出させた箟岳山
奈良の大仏は涌谷の金でつくった
涌谷町は、日本初の金の産地として、天平21年(749年)、奈良東大寺の大仏建立の際に金を献納したことで知られています。
町の中央に位置する箟岳山全体が黄金山と呼ばれ、その当時大勢の人が砂金の洗い取り作業を行ったことから、「谷(沢)が湧(涌)きかえる」ことから、涌谷の地名が付いたといわれています。
この「金を出せる山」黄金山の神を祀る黄金山神社は、金が産出されたことを記念して建てられた仏堂跡の上に立つ神社です。平安時代後期には奥州の神社を代表する存在であり、この黄金山神社を中心とする一帯は「黄金山産金遺跡」として、昭和42年に国の史跡に指定されています。現在は、史跡を核として公園と歴史・体験施設「天平ろまん館」による「わくや万葉の里」が整備され、だれでもこの天平の産金地を学ぶことができます。
1300年の時を経て、現代の金「金のいぶき」
涌谷町では、平成29年度から涌谷産ブランド米として機能性玄米食専用米「金のいぶき」の作付けを強化しています。1300年の時を経て、涌谷の現代の金として、奈良東大寺大仏殿に献納しています。
金のいぶきは、宮城県古川農業試験場で開発された玄米食向けの品種です。「玄米は炊くのに手間がかかる」「食感が固め」といった、これまでの玄米のイメージを覆す画期的な品種です。白米と同じように簡単に炊ける手軽さ、甘味のあるもちもちとした食感に、驚かれるお米です。
何よりの特徴は、胚芽が大きいという点です。栄養の宝庫である胚芽が通常の約3倍もある「金のいぶき」は通常の玄米と比べ栄養が豊富で、特に、GABA(リラックス効果・血圧降下作用)とビタミンE(強い抗酸化作用・老化防止)の含有が多く、現代人に必要な機能性を有した品種です。
農耕文化と密接につながる箟峯寺白山神事
日本初の金の産出によって「神仏の加護を受けた聖なる山」と位置付けられた箟岳山には、平安時代になると山岳信仰と結びつき、山頂に「箟峯寺、白山社」が開かれ、平安時代末から鎌倉時代初期には数十の坊がつくられました。創建から1250年を経た今も山頂を「殺生禁断」の聖域としてまもり続けており、地域信仰の拠点となっています。
そこで守り伝えられてきた白山神事は、農耕文化と密接につながったものです。山岳信仰の一つである白山信仰に、天台密教が結びつき農の神、田の神である作神様としての当地方の信仰の中心となっています。正月行事を中心として古式に則り、数百年にわたって引き継がれてきていることは、全国的にも珍しいことといえます。
正月3日に行われる元三会と呼ばれる祈祷・おみくじの後、1月の第4日曜日例祭では御弓神事(流鏑)が行われ、小さな子供が矢を射てその年の天候や稲作、大豆、麦、養蚕の作況を占います。また、1月25日の本祭の日に白山堂では、種籾の交換が行われてきました。農民が神前から種籾を借りていき、翌年、倍の種籾を神様に恩返しする「倍返し」の習俗が毎年繰り返し行われてきました。
現在種籾の管理・継承は農業試験場で行われていますが、当地では、神事として品種改良及び頒布が行われていたユニークな儀礼といえ、箟峯寺と農耕文化の密接な関係が良くわかります。